病理組織検査の基本的な染色方法は、ヘマトキシリン・エオシン (Hematoxylin-Eosin) 重染色(以下H-E染色)といい、ヘマトキシリン染色液とエオシン染色液による二重染色を行います。
しかし、 H-E 染色では染色されなかったり、 H-E 染色ではわかりづらいことがある場合に、特殊染色や免疫染色を行うことによって、特定の物質がわかりやすくなることがあります。この2者の違いは、特殊染色が化学反応によって特定の物質を染色するのに対して、免疫染色は抗原抗体反応という免疫反応を用いて染色するという違いがあります。これらはあくまでも H-E 染色による病理診断の補助的な手段であって、特殊染色や免疫染色だけで病理診断が行われることはありません。ここでは特殊染色について説明します。
特殊染色は、化学反応を用いてある特定の物質を染色するため、その物質の有無を確認できます。さらに H-E 染色などの形態像と合わせることによって、組織におけるその物質の局在性がわかります。したがって、 H-E 染色の組織像と併せて判断することによってします。
例えば、 H-E 標本上で乾酪壊死性肉芽腫が認められる場合は、結核菌の感染の可能性が疑われますが、 H-E 標本上では結核菌の検索はまず不可能ですので、チール・ニールセン染色という特殊染色を行います。
特殊染色を行うタイミングは、 H-E 染色と同時に行う場合と、 H-E 染色での鏡検後に追加で行われる場合があります。
特殊染色はたくさんの種類がありますが、検索の目的に合った染色法を選択して施行します。染色される対象は、線維であったり、グリコーゲンや粘液、脂肪、アミロイド、鉄、といった物質であったり、細菌や真菌といった微生物であったりします。代表的な特殊染色を列挙します。
線維を染色する : エラスチカ・ワンギーソン(EVG)染色、マッソントリクローム染色、アザン染色
粘液を染色する : PAS 染色、ムチカルミン染色
脂肪を染色する : オイルレッド染色、スダンIII染色
グリコーゲンを染色する: PAS 染色
アミロイドを染色する : コンゴレッド染色
鉄を染色する : ベルリンブルー染色
細菌を染色する : ギムザ染色、グラム染色、チール・ニールセン染色、ワルチンスターリー染色
真菌を染色する : PAS 染色、グロコット染色
これ以外にも沢山の種類があります。これらの中から適切なものを選択して使用します。複数を組合わせることもあります。