Q. 凍結切片はパラフィン切片と比較すると、どの程度の違いがありますか?
A. 凍結切片は術中迅速診断時に用いられます。凍結切片は検体中の水分量にばらつきがあると薄切できない部分が出てきます。また、水分を多く含む部分では氷晶によると言われるアーティファクトが出ます。HE染色の染色性では凍結切片はホルマリン固定・パラフィン包埋切片に比べ、細胞境界が不明瞭で核は淡く均一な印象を受けます。必要な手がかりが失われるため、診断は困難になります。上記の問題はフィルム法や捺印細胞診を併用することである程度補うことができます。
Q. ホルマリンはどのような機序で組織を固定しますか?
A. ホルムアルデヒドは常温で気体の物質ですが(沸点-19度)、その35~38%水溶液をホルマリンと呼びます。組織固定に用いる場合には通常10%ホルマリン(約4%ホルムアルデヒド水溶液)として用います。ホルムアルデヒドのアルデヒド基がタンパク質のアミノ基を架橋することによって組織の強度が増し、酵素による分解が起こらなくなって、いわゆる固定された状態になると考えられています。ホルムアルデヒド濃度を上げると固定は速くなりますが、逆に表面が硬化することで浸透性は低下すると言われています。なお、ホルムアルデヒドの嗅覚閾値は0.05~1.0 ppm で、眼への刺激性は0.01~2.0 ppm、上気道刺激性は0.10~25 ppm、下気道の閉塞症状は5~30 ppm、肺水腫・肺炎は50~100 ppm、死亡は100 ppm 以上とされています。IARC の評価では2A(ヒトに対して恐らく発がん性が有る)に分類されます。特定化学物質障害予防規則の第二類に指定されていますので、ホルムアルデヒドを使用する場所では作業主任者の選定などが義務づけられています。
Q. 切り出し時のコンタミネーションはどの程度の対策で防げますか?
A. 切り出しに用いる道具は水中に置いておくと微小な検体が付着するのを防げます。メスの刃を別の患者で使い回すのはやめましょう。
Q. 免疫染色は誰がどのように発明したのですか?
A. 1941年にAlbert Coonsが発表したのが最初と考えられています。
Q. 特殊染色は誰がどのように発明したのですか?
A. HE染色以外の染色法は全て特殊染色と呼ばれます。そのような意味では17世紀にAntoni van Leeuwenhoekが用いたサフランが最初と考えられます。
Q. 検体から肝炎に感染する確率はどの程度ありますか?
A. HBVの針刺し事故による感染の確率は30%と言われ、粘膜や皮膚から感染する確率も比較的高いと考えられます。あらかじめHBワクチンを接種するようにしましょう。また、受傷後はできるだけすみやかに、流水中で血液を絞り出し(汚染血液の血中への侵入量を最小限にとどめ)た後に、傷口を消毒することを厚生労働省は勧めています。詳細はこちら(厚生労働省HP)を参照してください。
HCVにはワクチンがありませんが、針刺し事故による感染の確率は1.8%と言われ、粘膜や皮膚から感染する確率は比較的低いと考えられています。
HBV、HCVいずれもホルマリンで失活しますので十分に固定された検体では感染の可能性は低いと思われます。
ただし、いかなる検体でも感染の可能性が存在するという前提で処理する必要があります。感染の可能性が発生した場合は院内のマニュアルに沿って行動し、感染症対策委員会などに連絡してください。