術中迅速診断の意義
通常、病理標本作製は採取から病理診断が出るまで早くても2~3日はかかりますが、手術中に病理診断を必要とする場合、15分程度で病理標本作製をします。
これを術中迅速診断といいます。術中迅速診断を行うことで、術前に得られなかった病変の組織学的な性質の確認、切除断端部における病変の有無、リンパ節転移の有無などを調べることができます。
術中迅速には、組織診と細胞診がありますが、ここでは術中組織診の作製の流れについて説明します。
迅速組織診断の主な流れ
・検体採取(主治医が手術室などで組織を切り取る。)
・検体搬送(看護師などによる運搬、エアシューターなど)
・検体受付
・肉眼的観察(病理医)
・迅速標本作製(臨床検査技師)
・瞬間凍結ブロック作製(未固定組織)
・凍結切片作製装置(クリオスタット)による薄切
・固定
・染色
・封入
・標本観察・診断(病理医)
・結果報告(病理医)
・標本保管
組織術中迅速標本作製法
事前の準備
1.「術中迅速組織診」の確認、照合
臨床医から提出されてくる『術中組織診依頼票』の記載内容を確認する。
依頼票は出来れば前日までに提出してもらう
その日の「手術予定一覧表」と依頼票との照合。
手術室から術中迅速依頼
<依頼票と口頭内容の確認>
手術室からインターカム等で術中標本依頼の連絡が入る
手術室番号、患者名、採取部位、提出材料の確認、提出目的、個数、感染症の有無を確認する。
検体が持参もしくはエアシューターなどで搬送されてくる。
「依頼票記載内容」・「検体の性状」・「検体容器のラベルに記載されている手術室番号・患者名・材料・採取部位・枝番・感染症」などを照合・確認する。
受付
病理組織番号を発番する。
依頼伝票に病理組織番号と手術室番号を記入する。
迅速担当の病理医に検体の届いたことを知らせる。
術中迅速組織標本作製
<切り出し・薄切・固定>
病理医が検体を肉眼的に観察し、性状や大きさなどを依頼伝票に記載する。
作製面を指定する。その際に大きなものは、ナイフでトリミングを行う場合がある。
提出臓器が脳や甲状腺などの場合、そして病理医が必要と判断した場合には、圧挫標本、スタンプ標本等の細胞診標本を作製する。
切り出し面を確認して、包埋皿(クリオモイド)に検体を入れる。
ドライアイスアセトン(-50℃)で急速凍結(約15から20秒)し、凍結ブロックを作製する。
スライドグラスに標本番号、患者氏名を記入する。
凍結ブロックをクリオスタット(庫内温度?25℃)で薄切する。
検体を庫内に設置後、ハンドルを廻して検体を上下に動かし、4~5μmに薄切し、スライドグラスに貼り付ける。
ボディアン固定液で30秒間固定する。
ボディアン固定液 :95%アルコール450ml、酢酸25ml、ホルマリン25ml
<HE染色作製>
(1) 固定液を流水で水洗する。
(2) ヘマトキシリン液に入れる。 (1分)
(3) 流水で水洗する。
(4) 0.5% 塩酸アルコール分別 (染色かごを3~4回出し入れする。)
(5) 流水で水洗する。
(6) 微温湯で色出しする。(30秒)
(7) エオジン液 に入れる。 (20秒)
(8) 脱水・透徹する。 (各々10秒)
(9) 封入し標本作製完了。
(10) 標本の出来上がりを確認するため鏡検し、病理医に提出する
病理医に標本提出後-永久標本作製
病理医は鏡検し、インターカムで手術室に診断結果を報告する。
診断報告を確認した後、提出された迅速組織をホルマリン液で固定し通常の標本作製工程でHE標本を作製、後日迅速標本と比較し診断を確認する。
術中迅速標本終了確認
病理検査終了時に、手術室へ手術の進捗状況を問い合わせ、以後の迅速検査提出の有無を確認する。
注意
・検体の乾燥に注意する。特に微小検体の場合や、濾紙等に組織を貼付けた場合。
・迅速用組織をホルマリンや生理食塩水に浸して提出しない事、標本作製不能となります。
・迅速標本は、「生」の検体を用いるため、感染に対する注意が必要である。
そのために、事前に患者の感染症の有無を確かめておかなければいけない。