Q. パパニコロウ染色について詳しく教えてください。
A. パパニコロウ(Papanicolaou)染色とは、ギリシャ人で米コーネル大学病理学教授であったGeorege Papanicolaouによって細胞診のために開発された染色法で、現在では、がんの早期発見や確定診断に欠く事が出来ないものとなっています。その染色液と含有色素、染色部位は表のようになっています。
染色液 | 色素 | 染色部位 |
---|---|---|
ギルヘマトキシリン液 | ヘマトキシリン | 核 |
OG-6染色液 | オレンジG | 細胞質 |
EA-50染色液 |
エオジンY ライトグリーンSF ビスマルクブラウン |
細胞質 細胞質 類脂質 |
核は、正に帯電したヘマトキシリン色素が負に帯電している細胞核(核酸)に結合し、青紫色に染まります。また、細胞質を染め分ける色素の分子量の大きさはオレンジG<エオジンY<ライトグリーンSFとなっています。この分子量勾配と荷電を利用し、角化した密な細胞質を有する細胞には最も分子量の小さいオレンジGが、マクロファージや中層から深層の扁平上皮細胞、腺細胞のような疎な細胞質を持つ細胞には大きな分子量のライトグリーンSFが、中間の密度の細胞質を有する細胞にはエオジンYが入り染色されます。疎な細胞質にはオレンジGも一旦入りますが染色中に洗い出されます。このようにして組織診では容易に観察できる深層から表層の細胞の立体構築を、細胞診では緑色、ピンク色、オレンジ色のような細胞質の色合いで判断します。
パパニコロウ染色は核構造が詳細に観察でき、細胞由来も判断可能で透明度の高い美しく優秀な染色法ですが、この能力を引き出すのに絶対に守らねばならない約束事が有ります。それは染色前に行う細胞の湿潤固定の厳守です。スライドグラスに細胞を塗抹したら直ちに95%エタノールで固定して下さい。
正確な診断は的確に処理された美しい標本から生まれます。